
チーク材のフローリングと薪ストーブがぬくもりを醸し出す半地下リビング。窓の外には、バイクのメンテナンスやバーベキューなどに活躍するガレージが広がる。
神奈川県・K邸 文/礒部道生 写真/中村風詩人
生活の舞台である住まいをどうすべきか――。人生を楽しむために住宅を考えることは必要不可欠です。そんな時にヒントになるのは、先人のチャレンジです。趣味を生かした都会暮らし、セカンドライフに備える、中古物件を購入して思いのままにリフォームなど、様々な目的、手段で、人生を楽しむ住み替えを実行したケースを紹介します。連載第2回は、土地を購入して新築したケースを紹介します。
私たちにとって我が家は自宅であり別荘であり、キャンプ場や山小屋でもあるんです」。
そう語るKさん(夫、51歳)の言葉通り、車庫と居住空間とが一体化したこの「ガレージハウス」はさまざまな顔を持っている。
オートバイ、キャンプ、登山、自転車等々アウトドア好きなKさん夫妻が、同じ神奈川・相模原市内の古い戸建てからこの家に住み替えたのは6年前のこと。新居に求めた最大条件は、2台のバイクや乗用車、膨大なアウトドア用品を1カ所に収納できる広いガレージを設けるということだった。
見つけた土地は東西両面が道路に接していた。「静かな環境だし、これなら車庫の両側からバイクを方向転換せずに出し入れができる」とこの地に引かれ、購入を決める。
ガレージハウスを特集した建築雑誌を読みあさって見つけた建築家には、「広いガレージ、天井の高いリビング、露天風呂のような風呂」など、まずは希望する条件を箇条書きに伝えた。ガレージに置きたいバイクやアウトドアグッズに関しては、どれほどの量や大きさかを事前に見てもらったほどだ。
完成したのが、屋内と屋外、合わせて27畳大の広いガレージと、それに隣接する半地下のリビングからなる一風変わった間取りの建物だ。K邸を特徴づける半地下のリビングは、高さ制限をクリアしつつ天井高を稼ぐための構造。
「実は、設計段階では室内が暗いのではと乗り気ではなかった。でも、独特のこもり感があって落ち着くし、車庫でバイクいじりをしていてもリビングの妻と会話がしやすくて、今ではお気に入りです」。
夫の念願だったオーブン付き薪ストーブは、妻には大反対されるも、なんとか説得して導入。薪ストーブのおかげで真冬でもはだしでいられるほどリビングは暖かい。ストーブのオーブンで自家製パンやピザを焼くなど、今では、料理好きの妻のほうが薪ストーブの虜とりこに。夫は自ら斧で薪割りをして、燃料用の薪を大量にストックする。
夏はヨシズ張りの引き戸を用い、見た目にも涼しげな2階の寝室。風が抜ける設計なので意外なほど涼しい
1. 1年前から家族の仲間入りをした愛犬アルプ。K さん夫妻の登山にもお供するようになった。ガレージでは自由に遊ぶ。
2. 開閉式の大きな天窓から差し込む陽光が、露天風呂のような開放感を演出する浴室。
3. 1階の茶室は炉を切った本格的な仕上げ。窓にはスリット付きの雨戸を取りつけ、夜でもリビング方向に風が抜けるように工夫されている。客間としても使える、多目的な和の空間だ。